3時からの国内大会から勝ち進んだ日本人歌手 伊藤ゆかり 布施明 雪村いずみ 水原弘 尾崎紀世彦の各氏が加わりいよいよ世界大会の生放送です
グランプリの雪村いずみさん これは誰も言葉をはさめないほどの熱唱で 指揮している私にもオケの皆さんにも その熱唱が大きなうねりの様に伝わってきたのを鮮明に覚えています 歌手とオケが溶け合い一つになり大きく大きく 舞い歌うのです 不思議なもので歌手のエネルギーが ずきん ずきんと伝わり 聴衆全て 武道館をものみ込んでいるようでした
このような体験の記憶は何度か有りますが その中でも特筆すべき一つでした この大会は日本勢の健闘が目立った印象が残っています
この回の審査員としてフランスからフランクプールセ氏が来日し 大会中ごろに自作の一曲を指揮しました 私は前日の音合わせに立会いましたが オーケストラに指示する氏の言葉の度に(勿論通訳を通してですが) 氏とオケのあいだに冷たい空気が流れているのを感じました 氏は自己顕示 権威を 余りにも前に出しすぎていたのでしょうか オケは極めて敏感に指揮者を見 感じ取るものです
本番当日オケは前日の事などなかったかの様に忠実に演奏していました しかし音楽の温かみは無く譜面に書かれた音のみが響いて やはり冷たいヒンヤリとした空気のみが虚しく残りました
本来でしたら遠来の客人である氏を オケ全員立ち上がり拍手で送るのが礼儀なのです しかし演奏を終えたオケはシーンと静まりかえったままで 私もこの重い虚しい空気に包まれ 立ち上がる一瞬を逃してしまいました
生放送です もう次の曲に進行しなければなりません 司会のコメントにかぶせて次のエントリー曲の棒を下ろしました
ここで申したい事はオーケストラと指揮者の関係です 雪村いずみさんのバックでは歌い舞っていた同じオケなのです 音楽は和合しあい信頼しあい 一体となりより良いものを求めます 独善的権威での押し付けには冷たい答えになってしまうと言うことでしょうか ポップス 大衆音楽であるからこそより良いものが素直に響く演奏であるべきと 私は今でも思っています
追記させていただきますと 同じお国よりやはり審査員として見えていたポールモーリア氏はお互いの目礼の中にも音楽家同士の温かみを感じ取れる音楽家でした
進行状態はほとんど私の記憶から消え去ってますが、もちろん23カ国73曲から選ばれた人々ですからにどの方もそれぞれに素晴らしい歌声でした 『でした』の中に入れてしまったフリオ・イグレシヤス、リック・スプリンングフィールドも 味は有ったのでしょうが このエントリーでは大きく印象には残って居ません 歌手にも時期待ちと言う言葉があるのかも知れません その後二人共世界的シンガーに昇りつめています
第1回の音楽祭 全員が始めての体験です 前日の戦場さながらのすさまじい音合わせもそれぞれの胸の中でそれぞれの思いを残したことでしょう
前エッセイでも申し上げましたがわたしにとってはあの丸二日演奏漬けのオケ 5時間の生放送 全て一瞬の出来事の様に思えます
ただエンディングの最後の棒を振り下ろした瞬間 疲労感より重責を果たせた心地よさがあったことが鮮明に脳裏に蘇ってくるのです
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